例年、曜日に関係なく、7月26日に開催される富松神社の薪能、
今年はまだ案内状(招待状)が届かない。
家から徒歩2分以内のところにある富松川の屈曲地点にある広報板見に行った。
昨年は市政100周年記念ということもあって、3種類も作成されていた薪能の開催予告掲示はない。
↓昨年の富松薪能のポスター
(尼崎薪能という名で、もう一か所でも開催される)
招待状の巻頭にワイフの句が掲載されることもあり、ワイフが市の文化センターに確認電話。
掲示用ポスターの作成が遅れているとのこと。
↓その地点から見た富松川の流れ。昨日はかなりの水量であったが、今日は平常時の水準
「薪能」を「俳諧歳時記」で調べると、かつては春の季語(興福寺の陰暦2月の行事)。
寒いので暖を取るために、法会を準備する作業員たちが焚火をして、余興にパントマイムをやっていたのが始まりのよう。しかしその後この行事は途絶して、変わって春日大社の12月の行事(若宮祭)を指すようになり、今では薪能は冬の季語となっているとか。
私にとっては薪能は夏の行事である。しかし8月8日に開催される尼崎薪能は秋の行事になる。
薪能の例句は多い。 冬の季語として扱われている。
- 薪能めらめら古き闇燃ゆる 大串 章
- 薪能死を想うわが頃となり 鈴木六林男
- 暮れおちし塔こそ迫り薪能 浦野芳南
- 薪能少う舞うていたりけり 和田悟朗
- はたはたと面動きぬ薪能 森 澄雄
- 舞ふ我に新樹の風や薪能 金井 綺羅
- この句は春の行事としているよう。
- 薪能篝なだめの役ありて 有働 亨
最初は焚火であったが、いつしか篝火になったとか。 - 地の闇へきざはし垂らす薪能 鈴木六林男
- 夕風の立ち来し火の粉薪能 稲畑汀子
- 薪能どっと燃え落つときの影 金子青銅
- 笛吹けば闇の寄りくる薪能 石原八束
- 薪能火蛾金粉となりにけり(新宿御苑) 細川加賀 『傷痕』
- 新宿御苑の薪能は近年、10月開催のようである。
- 笛吹けば闇の寄りくる薪能 石原八束 『風霜記』
- 薪能待つ間の闇の虫時雨 村上辰良
- 古びたる鬼の面なり薪能 高浜虚子
- 闇を裂く笛の高音や薪能 遠藤芳郎
- 薪能万の木の芽の焦がさるる 藤田湘子
- 鼓うてば闇のしりぞく薪能 石原八束
- 笛方のかくれ貌なり薪能 河東碧梧桐
- 夜風また炎立たせて薪能 浅賀魚木
- きつね雨なかりしごとく薪能 森田桃村
- 怨霊の風のつのりし薪能 高橋ツトミ
- 薪能ふるさと深き闇を持ち 生田政春
- 室町の闇を闇呼ぶ薪能 長谷川史郊
- これは京都開催かも。
- 薪能闇に火守の控えをり 池田ちや子
- 薪能万の木の芽の焦がさるる 藤田湘子
- 笛方のかくれ貌なり薪能 河東碧梧桐
- 薪能篝なだめの役ありて 有働 亨
- 笛方の灯に遠き座や薪能 福井まつえ
- 篝火に闇ちぎれとぶ薪能 矢野聖峰
- うつし世へ戻る一笛薪能 長谷川翠
- 一歩出て千里ゆきけり薪能 西川織子
- 紀の沖の霧流れくる薪能 綿谷ただ志
- 横笛のこゑの尾赭し薪能 ほんだゆき
- 摺足に齢を見せず薪能 東尾子
- 海鳴や蜑が火を守る薪能 島田まつ子
- 古都の闇打つ小鼓や薪能 山下佳子
- 序の舞の月に踏み出す薪能 長谷川祥子
- 夕づきし竹生島浮く薪能 西澤耕山
- 松籟をさそふ笛の音薪能 吉田節子
- 火が恋し薪能見て来たる夜は 古屋秀雄
- 薪能めらめら古き闇燃ゆる 大串章
- 鬼女たちまち闇に消えけり薪能 矢田挿雲
- 薪能大和の空は星満ちて 田代遊子
- 薪能小面映る片明り 河東碧梧桐
- 薪能入日の中に焔燃ゆ 橋本多佳子
- 闇に凝る瞳の数や薪能 田中拾夢
- 暮れおちし塔こそ迫り薪能 浦野芳南
- 薪能火の粉ついつい火を離る 山口誓子
- 観る人の闇に沈みぬ薪能 梅田実三郎
- 薪能鬼女に月光憑きにけり 松本圭二
- 羽衣の吹かれ立ちつつ薪能 坂井建
- 情念に今昔はなし薪能 川口咲子
- 衆徒の先ずもの申しけり薪能 稲岡長
- 唐衣小雨に濡るる薪能 佐土井智津子
- 業平をうつつにすなる薪能 千原草之
- 松に倚る旅人我や薪能 藤松遊子
- 薪能万の木の芽の焦がさるる 藤田湘子
- 一歩出て千里ゆきけり薪能 西川織子
- 序の舞の月に踏み出す薪能 長谷川祥子
- 紅梅を瞼の花に薪能 平畑静塔
- 狩衣の露けき袂薪能 武川明子
- 薪能めらめら古き闇燃ゆる 大串章
- 薪能しじまをも火が司どる 天野莫秋子
- 薪能暗きを川と見て泣くも 肥田埜勝美
- 影法師わなゝきこぞる薪能 阿波野青畝
- 曳くやうに笛吹き出せり薪能 茨木和生
- 火と風と暮れを誘う薪能 橋本多佳子
- 火を守るひとも泛かびて薪能 濱田俊輔
- 薪能僧の提灯東大寺 岡本松浜
- 薪能薪の火の粉上に昇る 西東三鬼
- 落花にも序・破・急のあり薪能 冨田みのる
- これは春の薪能
- 対岸の秋燈を入れ薪能 関森勝夫
- すだく虫一鼓に制す薪能 荒井正隆
- 八日月星一つ伴れ薪能 吉野義子
- 薪能めらめら古き闇燃ゆる 大串章
- 月かくす雲の遊びぬ薪能 岸田稚魚
- 薪能もつとも老いし脇師かな 高濱虚子
- 火と風と暮れを誘ふ薪能 橋本多佳子
- 薪能鬼女の金欄火に染まる 品川鈴子
- 薪能鉄の篝も火となれり 品川鈴子
- 鵜の川を焦がしてやまぬ薪能 伊藤敬子
- 薪能観世に嫁せし人侍り 山田弘子
- 薪能まで松にほふ夜道かな 藤田湘子 去来の花
- 薪能万の木の芽の焦がさるる 藤田湘子 雲の流域
- 薪能死を想うわが頃となり 鈴木六林男 国境
- 入相の鐘なほ暮れず薪能 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
- 夜風出て火の粉舞ひ立つ薪能 稲畑汀子 ホトトギス汀子句帖
- 鼓うてば闇のしりぞく薪能 石原八束 風霜記
- 笛吹けば闇の寄りくる薪能 石原八束 風霜記
- 大山祇(やまつみ)の放つ金の蛾薪能 野沢節子 八朶集以後
- 脇僧の寒げに暗し薪能 河東碧梧桐
- 笛方のかくれ貌なり薪能 河東碧梧桐
- 薪能の果てるや薪尽きる頃 河東碧梧桐
- 薪能小面映る片明り 河東碧梧桐
奈良開催の薪能を示す修辞がない限り、薪能は今や無季語として扱うべきであろう。