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Channel: ショウちゃんのブログ 俳句のある風景
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山眠る=冬 127句


山眠る眠るは己れかも知れず しかい良通

名山の百に凭れて山眠る 中原道夫

いくたびも虹を吐いては山眠る 高野ムツオ 蟲の王

勾玉の転がるたびに山眠る 高野ムツオ 雲雀の血

山眠る星の投網を打つごとく 神蔵 器

山眠る切支丹墓千と抱き 山本杜城

老い母の背なのまろさの山眠る 伊藤白潮

牧水の歌の一つの山眠る 児玉 菊比呂

睡迹の神列なりて山眠る 大西淳二

土いまだ木の葉のかたち山眠る 正木ゆう子

墨壺の糸ぴんぴんと山眠る 長谷川双魚 『ひとつとや』

山眠るいたるところに忍び釘 仁平勝 東京物語

火事注意の看板かかげ山眠る 金元喜代子

撞くごとに違ふ鐘の音山眠る 鍵和田[のり]子

山眠る交通止めの札立てて 宮田俊子

山眠る駅に一人の改札員 八巻絹子

硝子戸にはんけちかわき山眠る 久保田万太郎

奥へ奥へ夕日を送り山眠る 大野林火

炭竃に塗り込めし火や山眠る 松本たかし

山眠る田の中の道犬走り 山口青邨

ロボットの犬を里子に山眠る 小平 湖

火の窯を懐にして山眠る 小木曽かね子

狛犬に乳房が六つ山眠る 仙 とよえ

山眠るガラス工房懐に 北原富美子

山眠る神話の星が語りだし 宇咲冬男

眠れざる山山眠るなどといふな 川代くにを

山眠るでかんしょ節で囃しても 梅原富子

わたくしの前おほらかに山眠る 野末たく二

山帰来の実のつやつやと山眠る 近本セツ子

滅びたる狼の色山眠る 矢島渚男

山眠るさまを身近に眠りけり 杉山岳陽

スケートの渦ふところに山眠る 前田 鶴子

銃声を呑みて熊野の山眠る 坂口 麗峰

なほ青き牧を抱きて山眠る 澤田緑生

本陣の跡形もなく山眠る 坪井のぶ子

密猟の漢を隠し山眠る 星野秀則

山眠る噴火名残の蒸気上げ 上柿照代

背負ひたる子の温もりや山眠る 松山 敏子

山眠るときどき甘き匂ひして 仙田洋子 雲は王冠以後

山眠る光の音を聴きながら 仙田洋子 雲は王冠

山眠る信玄側に寝返つて 佐々木六戈 百韻反故 わたくし雨

十二経奇経八脈山眠る 佐々木六戈 百韻反故 初學

五六戸の狩宿かゝへ山眠る 鈴間斗史

山眠る夕日の溜り場をふやし 村越化石

山眠る大和の国に来て泊る 山口青邨

炭竃に塗込めし火や山眠る 松本たかし

山眠る一と焔にて檜燃え 神尾久美子

大いなる足音きいて山眠る 前田普羅

ひとりいる時はよく見え山眠る 鈴木六林男

鳰潜きあとの無音に山眠る 野見山ひふみ

銃身にけものの匂ひ山眠る 森田かずや

山眠る柩にならうとする木々も 中原道夫

筬音のひとつが残り山眠る 神尾久美子

山眠る神話の星が語りだし 宇咲冬男

みどり児にふしぎなにほひ山眠る 二階堂文子

土いまだ木の葉のかたち山眠る 正木ゆう子

山眠る真白き山もその奥も 岡田きよ

縄跳びのこゑのむかうで山眠る 鈴木蚊都夫

滅びたる狼の色山眠る 矢島渚男

山眠るさまを身近に眠りけり 杉山岳陽

御配流と伝ふ帝の山眠る 猿渡青雨

山眠る噴火の怖ささらしつつ 安原葉

炭竃に塗り込めし火や山眠る 松本たかし

干菜風呂に祖母のこゑして山眠る 伊東美也子

いくたびも虹を吐いては山眠る 高野ムツオ

山眠るまばゆき鳥を放ちては 山田みづえ

山眠るなめくぢ一つ大きくて 岸本尚毅 舜

山眠る信玄側に寝返りて 佐々木六戈

チェロの音にベースを重ね山眠る 吉原文音

山眠る間に璞玉掘り出せり 柴田奈美

山眠るその懐に碧き沼 柴田奈美

山眠る信濃や鯉の飴煮食ひ 石嶌岳

筬音のひとつがのこり山眠る 神尾久美子

木も草もいつか従ひ山眠る 桂信子

山眠る恋の終りを見届けて 黛まどか

山眠るまばゆき鳥を放ちては 山田みづえ

妻の骨ひそと納めて山眠る 本井英

山眠る田の中の道犬走り 山口青邨

いくたびも虹を吐いては山眠る 高野ムツオ

炭竃に塗込めし火や山眠る 松本たかし

山眠る罠がどこかにありさうな 藤本始子

夜よりも昼深々と山眠る 古住蛇骨

また次の千年京の山眠る 田山康子

凍らざる湖の謎山眠る 大和あい子

窯中に紅蓮の炎山眠る 上田佳久子

山眠るはざまの駅に下り立ちし 柴田宵曲

どつしりと座せと訓へて山眠る 太田土男

枝打ちの梯子残して山眠る 冨田みのる

茅堂に一尊おさめ山眠る 荒井正隆

長老の葬列長し山眠る 杉本寛

朝鮮も満州もなく山眠る 遠藤梧逸

塩炒つてぬくめる腹や山眠る 龍岡晋

手習のまつくろ草紙山眠る 龍岡晋

炭竃に塗込めし火や山眠る 松本たかし(1906-56)

日あたりの海ほか~と山眠る 尾崎紅葉

水涸れし磧のはてに山眠る 田中冬二 麦ほこり

山眠る岡山兵庫国境 吉屋信子

山眠るまばゆき鳥を放ちては 山田みづえ

木も草もいつか従ひ山眠る 桂信子

柳生道浮びおちいり山眠る 井沢正江

山眠る机の疵の一つならず 鈴木真砂女

落石の余韻を長く山眠る 片山由美子

土いまだ木の葉のかたち山眠る 正木ゆう子

荘守の声からからと山眠る 古賀まり子

山眠る浮世絵いろの夕焼に 朝倉和江

母ここに育ちし窓や山眠る 深見けん二

山眠るとはよく水に映ること 今瀬剛一

窓口に嵌めこまれたる山眠る 瀧井孝作

笠を編む麓の村や山眠る 内田百間

山眠る行く人なしの道入れて 上田五千石 琥珀

ひとりいる時はよく見え山眠る 鈴木六林男 後座

青空や道に巻かれて山眠る 鈴木六林男 王国

山眠るまばゆき鳥を放ちては 山田みづえ 木語

弘法の井のあたゝかさ山眠る 森田峠 逆瀬川

切り売りの大糯菓子に山眠る 有馬朗人 耳順

長城や烽火連ねし山眠る 有馬朗人 天為

柳生道浮びおちいり山眠る 井沢正江 一身

よく焼けしうなぎの肝や山眠る 久保田万太郎 流寓抄

硝子戸にはんけちかわき山眠る 久保田万太郎 流寓抄

炭竈に塗込めし火や山眠る 松本たかし

落葉みな万骨となり山眠る 楠本憲吉

山眠るごとくに臥すか牛として 赤尾兜子

山眠る石仏無韻の鈴を振り 福田蓼汀

大いなる足音きいて山眠る 前田普羅

母ここに育ちし窓や山眠る 深見けん二

缶コーヒー膝にはさんで山眠る 津田このみ

炭竃に塗込めし火や山眠る 松本たかし

江戸時代の例句がない。「俳諧歳時記」を見るに(索引のページ数表示に校正ミスあり)、やはり
芭蕉、蕪村、一茶などの例句表示なし。時代考証などもない。明治期以後の「新季語」か?
「俳句歳時記」の挙げている例句はなべて「ホトトギス」掲載の句であり、
しかも「山眠る」という語の定着以前の様子を呈している。


妹山に誘われ眠る背山かな 十二星
大原路や比叡より眠る嶺つづき 北人
眠る山閂下す詩仙堂     青蛾
鷲ケ嶽眠り九頭龍涸れにけり 小照


例句一五句の中では
市中は烈しき風や山眠る   草城
山眠る大和の國に来て泊る 青邨


だけが「山眠る」を終止形で使っている。この辺りが「山眠る」の季語化・実作の発祥かも。
ごく限られた資料からの推察だから、仮説の域をでないが。



山粧(ふ う )=秋 は少ない。

山粧う八瀬童子が謀りごと 仁平勝 東京物語

秘めごとを持ちてより山粧へる 満田春日

山粧ふけものの道もくれなゐに 檜 紀代

楢くぬぎ枝染め分けて山粧ふ 荒 久子

滝になる水湛へたり山粧ふ 菅 裸馬

芭蕉像置去りにして山粧ふ 斎藤 都

山粧ふいつよりの火の記憶かな 石田阿畏子

水靄の奥に色あり山粧ふ 手島靖一

雲仙を隔て眉山粧へり 高浜年尾

十三陵眠らしめ山粧へる 西村和子 窓

老眼始めて明かに山粧へり 尾崎紅葉




山笑う=春   も少ない (「山笑」で検索したら0だった)

俳諧歳時記の「山笑ふ」の項では、「古書校註」で、『滑稽雑談』では「郭熙晝譜」に云くとして。
「春山淡治にして笑ふが如く、夏山蒼翠にして滴るごとく、秋山明浄にして粧ふが如く、冬山惨淡として眠るが如し」 が引用されている。
この文は『臥遊録』の中の文章として、『年浪草』『琹草」等では引用されている。


山笑う消しゴムでその山を消す 清水冬視

山笑うたしかに長き馬の顔 仁平勝 東京物語

噴煙の仁王立ちして山笑う 仲丸くら

手入良き仏足石や山笑う 脇本良太郎

一族の真ん中に母山笑う 伊関葉子

山笑う隠れてもまた隠れても 二村典子

山笑う生活保護を受けている 清水哲男(1938-)


よって、山笑う、山滴る、山粧う、山眠るの季語は、出所が同じということになる。

俳諧歳時記では、山滴るは、「山滴り」の形で登載されている。しかも主季語は「滴り」であって、その傍題として「山滴り」が登場するので、
夏山の形容としてではない。

この季語(山滴る)は句会でも、俳句雑誌でもお目にかかったことはない。

よって夏山の様を形容する季語としての「夏滴る」は未だ成立しているとは見なせない。

私は、かつて

花粉症が一面記事に山恥じる

ごく最近

百歳翁の葬の賑わい山はしゃぐ

という句を作った。

この「山はしゃぐ」は新季語のつもりである。



ところで「俳諧歳時記」の索引をみていると、「山」が夏の季語となっていた。
そのページを開くと(開く前から予想できたが)、祇園会の傍題すなわち鉾と山の山を指している。
しかしそれと切り離して「山」は夏の季語という扱いは、無理がある。

街の粧い

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